『大阪〜奈良』
 昨年の夏、京都まできた『つぎはぎ日本一周』であるが、その後は京都は遠いということもあり西側(九州など)に向かって進んでいた。連続して休みを取りやすい夏、今回再び東側に向かうことにした。
 京都までをどうするか、迷ったが、車で行くにはちょっと遠すぎて大変であるし、鉄道を使うにしても、益田は不便であり、京都に着くまでに随分時間がかかる。石見空港を利用する方法もあるが、高い。そこで、前々から目をつけていた、夜行バスを利用してみようと考えた。ただ、一つ気になっていることがあった。それは、自転車が積めるかどうか?ということだ。鉄道や飛行機は輪行という方法は定着してきているが、バスとなると?の部分が多いのだ。
 早速、石見交通に連絡してみた。すると、大丈夫とのこと。一安心である。そこで、予約をしようとしたら、行きの8月1日の夜中発の便は空いているが、帰りを予定していた8月3日分は満席ということだった。帰りが無いということは旅を断念しなければならない状況である。ひとまず、電話を切り、インターネットで情報を収集したところ、JRバスが同じ路線を運行していることがわかった。問い合わせをしてみると、自転車もOKで8月3日も空いているということだった。ただ、JRの方が大阪発の時間が早く大阪にいる時間が短くなってしまうが、旅をあきらめるよりはましなので、すぐに予約をした。
 8月1日の夜、益田駅に行き長距離バスを待った。発車時刻は10時30分で、大阪到着は朝6時、このバスは以前何度か利用しているので、安眠グッズ(エア枕)を持って乗車した。自転車も下の荷物置き場に入れることができた。なかな長距離バスは使える。鉄道だと、自転車は自分が管理しなければならず、他のお客さんの迷惑にならないように気を使う(結構これがストレス)のであるが、バスは、一度荷物置き場に入れてしまえば後はゆったりできるので、ストレスはたまらない。大阪までの7時間半の間、ただひたすら眠る。途中何度か目を覚ましたが、それでもエア枕のおかげでよく眠ることができた。 
2004.8.2
 定刻どおり朝6時に大阪の梅田にバスは到着した。自転車を下ろして、組み立てる。朝が早いので車も少なく、車道を通行してもそれほどの恐さもない。また、今回はロードレーサーなので、スピードも出るので車道を中心に進むことにした。まずは、帰りのバス停を確認するためにJRの大阪駅に行く。ほどなく、バス停を発見したので、次に進むことにした。

  

 大阪城。昭和9年に再建された城であるが、その大きさに圧倒される。江戸時代は相当遠くからでもこの城は見えたのではないかと思う。朝早かったので、城の中には入ることができなかったが、外をゆっくりと見ることができた。高層ビルが背景に見えるのも時代を隔てた景色の融合という感じで面白かった。石垣には、どうやって運んできたのだろうか?というほどの巨石がところどころにあり、(この石垣は徳川時代のもの)その技術というか、金のかけ方というか、そのスケールに驚いた。 

   

   

月曜日というのは、博物館関係は休館が多く、歴史博物館や、このあと行った、自転車博物館などは入ることができなかった。残念。

   

 次に向かったのは、堺である。堺といえば信長の鉄砲を作ったところという感覚が強いが、現在も物づくりの地としてクボタの工場があったり、自転車界のマイクロソフトといわれるシマノがあったりする。
 堺に向かっていると、大きな森が見えてきた。この森の周りには堀がある。そう、仁徳天皇陵である。周囲2718メートル。堀を含めた東西656メートル、南北が793メートルの日本一大きな前方後円墳である。中に入れるかと思ったが、入れないので、周りから見るしかなかったが、これも本当にスケールが大きい。今から1900年も前のものとは思えない。相当数の人数の人々が建設に関わったのだろうと思う。
 その後、自転車博物館に行ってみたが、月曜日は休館ということだった・・・・・ショックである。
 それでは!ということで、シマノに行ってみることにした。受付に行って、工場を見学させてほしいとお願いしたが、さすがに急なことで、断られた。それでも、ショールームならどうぞということで、綺麗な受付の方に案内されて、ショールームに入った。そこには、シマノが扱っている製品が展シマノ示されていた。あこがれのデュラエースなどもじっくり見ることができた。
 ツールドフランスでランスが6連覇したことなど受付の人と話をしたが、(ランスのロードレーサーにはシマノのデュラエースが使用されている)受付の方は手首を見せてくれた。そこには、黄色いブレスレットのようなものが着いていた。このブレスレット「LIVE STRONG」といい、売り上げ金は癌患者のための治療費や研究費にあてられるものである。実は、ツールドフランスで6連覇する前に、ランスは癌に侵されたのだ。癌から生還して、この偉業をなしとげたすごい人なのだ。シマノの社員は全員がこの「LIVE STRONG」をしてランス、そして癌患者のために協力しているということだった。
 シマノを後にして、奈良に向かって進む。斑鳩町、法隆寺に着く。蝉の声が鼓膜を圧迫する感じで、相当大きく聞こえる。

 世界最古の木造建築というだけあって、やはり風格がある。樹齢2000年以上のヒノキが使われて、今日もそのヒノキが建築当時のまま使用されているということに、驚くばかりである。詳しくは、『法隆寺を支えた木 西岡常一、小原二郎著』『木に学べ 西岡常一著』にあるが、飛鳥時代の宮大工の息吹が聞こえてきそうになる。しばし、太古の空気に触れた感じがした。

   

 法隆寺を出るころに、ちょうど昼時になっていた。出てすぐの店ののぼりに「柿アイス」というのがあったので、ためしに食べてみようと中へ入った。すると、もっと面白そうなものが・・・柿うどんというものだった。法隆寺と柿?どうしてかな?と考えてみると・・・・「柿食えば鐘がなるなり法隆寺」ではないか。なるほど。柿うどん・・・しこしこしていい感じ。おいしかったが、量が少なかったのが残念。柿の味は・・・わからなかった。柿アイス・・・色はオレンジ。柿の味はかすかにしたような気がした。

 

 奈良に向かって進む。唐招提寺と薬師寺を見学するつもりでいたのであるが、唐招提寺は修理中ということで、今回はやめ、薬師寺にいった。ここも、昔からの東塔と西岡常一さんが再建した西塔がある。本によると、再建した西塔の方が建築当時の様式に近いということだった。東塔は室町時代に地震で歪み、大修理を行ったそうであるが、そのときに、室町時代風になっているそうである。一番よくわかるのは格子の窓が3つあるはずのところを室町時代の修理で強くするために白壁にしてしまったということだ。なるほど。

   

東塔 西塔   

 夏のツーリングは本当に汗をかく。しかし、以前に比べてこの汗に不快感は不思議なほどない。逆にしっかりかいて、爽快という感じですらある。リュックの肩バンドのところを見ると汗のため、塩を吹いていた。すごい。
興福寺 さて、奈良といえば鹿。ということを忘れていたが、興福寺に行ったときにその横の公園に鹿がいっぱいいたので、あっそうだった。奈良といえば鹿だった。鹿のフンというお菓子もあったけな?などと思い出した。鹿をバックに写真を撮った。ここの鹿は結構お行儀がよいように感じた。以前子供たちをつれて修学旅行で宮島に行ったときは、鹿に紙を食べられるは、弁当を取られるはで、散々だったが、ここの鹿はそんな感じはなかった。なぜだ?
 奈良といえばU・・・・東大寺の大仏である。これを見なくちゃ奈良に来た気がしない。ということで、東大寺に向かった。
 南大門の金剛力士像にお出迎えされ、中に入っていく。大仏殿の大きさはさすがで、目がくらみそうな感じがした。こんな感覚は六日市の深谷大橋から向こうの山を見たとき距離感がつかめずにふらっとしそうになったことがあるが、そんな感じに似ていた。
 さて、ここはめずらしく写真撮影可ということで、写真を撮った。先日NHKの趣味百科でやっていたが、暗いところを上手に撮る方法を思い出してやってみた。その方法とは、フラッシュを使わずに、(フラッシュを使うと背景が真っ暗になる)ネックストラップを首にかけ、ぴいんと張ってカメラを固定して写すというものだ。これがなかなかいい感じだった。三脚がないときなど、手軽にできるカメラ固定方なので、忘れないでこれからも活用したいと思った。(ということで、ありがたい大仏さんの写真をどうぞ)

   

 今回は、インターネットでホテルを予約していた関係で、なんとしてでも京都に着かなければならなかった。インターネットで予約をするほうが随分お得なのだ。8505円が5775円になるのだ。
東大寺を出たのは午後4時前だったので、他へはよらずに京都に向かうことにした。奈良から京都まで、ちょうどいい感じで自転車道が通っている。木津川スタートの嵐山までの40キロぐらいある自転車道だ。24号線を通ることも考えたが、自転車道だと、車のことを心配する必要がないので、自転車道に決定。ということで、気持ちよく自転車道を進む。木津川の土手の上を通ったり河川敷を通ったりと川沿いを進むのでとてもいい感じだ。時々、急なカーブがあってびっくりする箇所もあったが、車がとおらないということは本当に安心して通ることができる。時々、通行禁止のはずのバイクが通るのが気になった。20〜30台ぐらいはすれ違っただろうか?

    

 軽快にこの道を通っているときに、その事件は起きた。『つぎはぎ日本一周』最大のピンチが到来したのだ。
 まさかとは思ったが、なんと、専用道でパンクしてしまったのだ。後ろのタイヤに違和感があったので止まって調べてみるとなんとバラ科の植物のものだと思うがトゲが2箇所にささっていたのだ。釘やガラスではないこんなものでパンクをするとは思ってもみなかったことだ。後輪に刺さっているということは、前輪もひょっとしたら?と思って調べてみると、なんと、見事に刺さっていた。前後いっぺんにパンクである。

 

 でも、こんなこともあろうかと、きちんと換えのチューブ(1本ではあるが)を持ってきていたし、パンク修理セットもあるので、それほどあわてずに修理開始した。
 当然換えチューブの方はうまくいき、交換終了。問題はパンク修理の方だった。なんとゴムのりが乾いてからからになっていて、使用不能になっていたのだ。ガ〜ン。京都までまだ30`以上あるというのにどうしたものか?と途方にくれていた。しかも、ここは自転車専用道。車の往来はない。タクシーやバス、電車なども通らないところだ。自転車店も近くには見えない。
 しかし、サイクルロードだけはある。時々自転車に乗って運動をしている人が通るのだ。そして、何人かが声をかけてくれた。2人目の方が幸いにもパンク修理セットを持っていたのだ。助かった〜。ゴムのりを売ってほしいとたのむと、お金は要らないからあげるよ、ということだった。おまけに貼るほうのゴムも下さった。感謝、感謝である。お礼を言って別れたのであるが、本当に助かった。
 これで、一件落着と思っていたのだが、なんと、ロードレーサー用のチューブは2センチの幅しかなく、普通の大きさのゴムは大きすぎてなかなかうまいぐあいにひっつかないのだ。2回か3回かやり直したが、結局うまくつかずにあきらめることにした。
 仕方なく、自転車を押して、普通の道路に出ることにした。
 次に私が考えた手段は、自転車を輪行して京都まで行くというものだ。くやしいけど、こればっかりは仕方がない。
 途中地元の人とであったので、ここから一番近い駅はどこですか?と聞いたところ、幸いにもすぐ近く(400メートル先)にあった。後で、地図で見てみたが、自転車道と駅とが一番近いような場所でパンクしていた。不幸中の幸いである。そこまで、自転車を押しながら「換えのチューブは今度から2本は必要だなあ」と考えていた。

  

三山木という駅で、近鉄線で京都まで行った。駅からホテルまでもタクシーで移動した。最初タクシーに自転車が乗るかな?と心配したが、後ろの席に私と一緒に乗ることができた。ホテルに着いたのはチャックインを予定していた8時前だった。
 普通なら、このまま体を休めるのであるが、今日はそうはいかない。パンクを修理しなければ、明日の『つぎはぎ日本一周』はできないのだ。修理ができなかった原因である貼る方のゴムの大 きさを小さくする必要があるので、コンビニではさみを購入した。400円ぐらいしたが、これも仕方が無い。夕食をとったあと、ホテルにもどり、修理開始。水につけて、パンクの穴を確認すると、音だけでは確認できなかったところにも穴があったことを発見。そこも、丁寧に修理した。やはり、ゴムの大きさというのは重要で小さくしたらなんとか直った。これで、明日のツーリングができる。一安心である。こうして、『つぎはぎ日本一周』最大のピンチを切り抜けたのである。

 

 本日の走行距離 94キロ
 益田〜大阪長距離バス 8500円
 法隆寺入場料 1000円
 薬師寺入場料 550円
 東大寺入場料 500円
 三山木〜京都 480円ぐらい?
 タクシー    1120円ぐらい?
 ホテル代    5775円















『つぎはぎ日本一周』